1話
ぼくは主役にはなれない。
幾ら努力をしようとそれは決して変わることのない事実だ。
これは 産まれ持った運命なのだから受け止めるしかないようだ。
そう仕方のないことなのだ。
でも、理屈でわかった気になっても彼のことがうらやましいと思って
しまう。ぼくは一人では動くことさえ出来ないのに、彼は、自転車さんは一人でも役に立つことが出来るから。
この決して揺るがない現実がぼくの心を傷つける。
劣等感を抱き、巡りたくもないこの鬱蒼とした道のりを繰り返し歩いて
しまうのは"一人では何も出来ない存在"だという現実に本気で向き合う勇気もないのに、逃げだすこともできないからなのだろう。
決して長くない人生なのにこのまま鬱々と考えるだけで過ごし切って
しまいそうだ。
ぼくは主役にもなれなければ、脇役を演じきることさえも出来ない。
中途半端なものなんだ。
だって自転車さんは格好良いし、出番も多い。
それに比べてぼくは本当に短い間しか役に立たない。
どうですか、もしあなたが生まれ変わったとして補助輪と自転車だったら自転車になりたいと思うでしょ? 誰だってそう思うはずです。
ぼくが嫉妬する気持ちもわかるでしょ?
自転車さんは一人でも人間をいろんな所に連れて行ける。
でもぼくは一人ではなにもできないのだから……。
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