3話
授業中に休み時間。学校にいる時はいつも咲崎を目で追っていた。
僕の視線に咲崎が気づくと、思わず視線をそらした。
「慎吾君ってさ、学校で私と目が合うと、絶対に知らぷりするよね」
咲崎はそう言うと、そっぽを向いてみせた。どうやら普段僕がしていることを
大げさにやっているようだ。
「そうかな?」
僕がとぼけると、
「そうだよ。まあ慌てた顔が面白くていいんだけどね。慎吾君ってね、慌てた時
こんな顔するんだよ」
僕の行動を真似たであろう咲崎の姿は、まるでつまみ喰いがばれた
猫みたいだ。
「そんな顔してねーし」
「しているんだよ〜」
二人で帰った帰り道。咲崎は僕の表情を覗き込むとそう言って笑ったの
だった。
昼休み。いつものように山田、後藤と昨日観たお笑い番組の話をしていた。なになに芸人のあのギャグが面白かっただとか、今週あの芸人のネタはつまらなかっただとか、そんな会話だ。
二人と会話を交わしていたけれど、僕は実はそんな芸人の話なんて上の空で、横目では咲崎の様子をうかがっていた。友達と楽しそうに話をする咲崎は僕の隣を歩いている時とはなんだか少し違ってみえた。それが魅力的に見える時もあったけど、寂しく感じることもあった。
いつだって彼女が話している会話の内容が気になってしかたなかった。『親友』の塩田多佳子には僕のことをなんと言っているのだろうか? 咲崎が楽しそうに会話をしていると、その輪にすぐにでも混ざりたい衝動にかられた。
咲崎がこちらを見ると僕はいつものように視線をそらした。繋がる視線の糸は長い間結ばれていてはいけない。この糸を誰かに気づかれるわけにはいかないない。
繋いでは、切って、また繋がる二人しかわからない『視線の糸』。
この線状のやり取りは危険でもあったけど、止めることなんてできなかった。切っても、切っても、どこかでは確かに繋がっている糸のやりとりを、僕は小さな恐れを抱きつつも確かに喜び、楽しんでいた。
つづく
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