3話
「そんなものさ、最初は緊張するものだよ。私だって最初はそうだったんだから。
まぁ、時期に慣れるだろうから頑張って。大事な会議の時以外はそんなに力まなくても平気だから」
「はい、ありがとうございます花柄先輩」
シワが寄っている先輩Yシャツもやさしく声をかける。
「そうだよ、あまり力まないで」
「ありがとうございます」
Yシャツは職場の先輩と積極的に交流し様々なことを 学んでいた。
先輩の助言1つ1つに耳を傾け、忘れないようにメモを取り、 少しでも先輩に追いつこうと努力を重ねていた。
ネクタイはというと、前よりも少しだけ慎重になった。
「ちょっとネクタイさん待ってください、御主人が少し苦しそうですよ」
あの夜、ネクタイはクローゼットに戻ると、朝方まで力加減の 練習をしていた。
「就職活動中はあんなミス絶対しなかったのに、会社だと周りは先輩だらけ、正直少し焦るな。えっと正しい力加減はこの位だったか、緩すぎると引き締まって見えないしな……」
Yシャツも練習に付き合い見守っていたが、慣れないことが続けざまに起こる日々で疲れていたのだろう、いつのまにか寝てしまっていた。
失敗をした日の帰り道、ネクタイは深く考えこんでいるようで、 Yシャツが話し掛けても、それに応えようとしなかった。
「俺のせいで良郎が恥をかいたんだ。本来良郎を守るはずの俺が、逆に足を引っ張り困らせてしまったんだ」
Yシャツが日々努力を重ねのも、責任感が強く陰で努力するネクタイの姿を一番近くで見ているからだった。
"ちょっとこれコピーお願いね"
"なんだ、その雑な仕事は、これは仕事なんだよ、仕事。いつまでも学生気分じゃ困るんだよ"
良郎も社会にもまれ、一社会人として少しでも順応しようと努力を重ねていた。
気づけば季節は変わろうとしていた。
2話へ
|