2話
ぼくが今お世話になっているのが矢野さんのお宅。
ここに来てだいぶ経つな……。
ここには、とうちゃんとの思い出がいっぱい詰まっている。
とうちゃんは、とうちゃんは……。
とうちゃんは、矢野さんの息子さんの遊び相手をするのが好きだった。
息子さんもとうちゃんと遊ぶのが好きで、特にぶらさがって遊ぶのが大好きだった。
本当にちびっこい頃から、とうちゃんは遊び相手になっていたらしい。
とうちゃんは、何時も寝る前になると決まって息子さんとのいろんな思い出を話してくれた。
息子さんが小学校に入学した時は、まだ人見知りをして、
しばらくの間とうちゃんぐらいしか遊び相手がいなかったこと、
かけっこで初めて1等になった時は、
疲れているはずなのにうれしさを抑えきれなくて、
自慢したり、ほっぺを緩ませてうれしそうにぶら下がっていたこと。
とうちゃんは息子さんとの1つ1つの思い出を大切にしていて、
息子さんの話をする時はいつも少し自慢げだった。
とうちゃんは息子さんに ぶらんぶらん
と健康ぶら下がり機のようにぶさがられても嫌な顔一つすることはなかった。
でも息子さんが大きくなるにつれ、
とうちゃんの体はじょじょに曲がってたし、体はいつも『ぎっぎっ』と音を立てていた。
とうちゃんは、少しずつ成長する息子さんを見ること、
そしてなによりも自分の体で息子さんの成長を感じ取れることがとても嬉しいみたいだった。
少しずつ曲がり続ける、とうちゃんの体。
ある日ぼくが「痛くないの」と聞くと
「痛くなんかないんだよ。とうちゃんはさ、うれしいんだよ」
とうちゃんは、とても穏やかな笑顔を見せ、
そう答えてくれた。
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