1話
街がにぎやかになる寒い時期、そんな季節を心から待ち望み、出番を今か今かと待っている『モノ』がいる。
そのモノの名は、ツーリ。
ツーリはごろうくんの家にやって来て二年たつが、活躍した期間はたったの
三ヶ月くらいしかない。
他の一年以上の間、なにをしていたのかって?
それはひたすら出番を待っていたんだよ、押入れのおくの方でね。
押入れに長い間しまわれているのだから『退屈でつまらない人生なんじゃないの?』と思うかもしれない、だけどそれは違う。
確かに他のモノと比べるとしまわれている時間はとっても長い、けどツーリは他のモノからうらやましがられる人気の高い職業についていて、ツーリ自身も今の職業に満足していたからだ。
ツーリをうらやましがるモノの中には『ほとんど一年中寝ていられて楽ちんそうだ』なんて言う『なまけモノ』もいたけどね。
ツーリは数十センチしかない小さなクリスマスツリー。そんなツーリの定位置は料理がならぶテーブルのすみっこ。
ツーリの事が大好きなごろうくんの家はお世辞にも『広くて大きい家』とは呼べない。そんな家なのだから部屋の隅にだってクリスマスツリーを置いておける余裕なんてない。
でも「せっかくのクリスマスだから」と、両親が買ってきたのがツーリだった。
幼稚園の先生がクリスマス会の話をしたある日、ごろうくんはいつも道草をしながら帰る道を、最短距離で走り、玄関をあわてて開け、お母さんに言った。
「そろそろクリスマスツリーを出さないとね!」
たくさん走って、ハアハアと息を切らしているのに顔はすっかりほころんで満面の笑顔。
そんなごろうくんの表情を見て、ごろうくんよりも嬉しそうに笑ったお母さんは、洗濯物を急いでたたみ、押入れの戸を開けた。
一年ぶりにテーブルに戻って来たツーリ。
押入れから出してもらった日は、ごろうくん達とたくさん遊んだ。
大きなわた飴のようなワタを付けてもらうと、まるでおじいさんのヒゲのようだった。頭に星をつけてもらうとちょっとエラクなった気がした。お父さんのメガネをかけてもらうとすこし利口なった気がした。
ツーリにとってもなにせ一年ぶりのことなのだから嬉しくて、楽しくて、夢のような日だった。
クリスマスまであと三週間。
ごろうくんと遊んでとっても幸せな気分になったツーリだけど、クリスマスまでの間、ずっと遊んで過ごすわけにはいかない。
ツーリには大切な役目あるのだ、だから浮かれてばかりはいられない。
ツーリの役目、それは交渉屋。サンタとのプレゼント交渉役。
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