3話
クリスマスまで数日と迫ったある夜、サンタがいよいよ下見にやってきた。 とっても寒い夜だった。
「やあ、ツーリ。元気だったかい?」
サンタは口が見えなくなるくらい、ふさふさと生やしたヒゲの間から白い息をはいて言った。
「こんばんは、サンタさん。ぼくはとっても元気です。毎日ごろうくん達と楽しく過ごしています」
「そうか、それはよかった。それにしても今夜はとても冷えるね」
「ぼくはこのワタがあるから平気です。それにこの星の帽子だってあります。ごろうくんがお母さんと飾りつけてくれたんです」
「ほう、それはうらやましいね。ふわふわしてとってもあたたかそうだ。ところで ツーリ、そのごろうくんだけど、どうだね? いい子にしているかね?」
「はい、とっても」
「じゃあ、ごろうくんのことを聞かせてくれるかい?」
ツーリは前もってサンタに何を報告するべきなのか考えていたが、サンタを目の前にすると緊張してきてしまった。
なにから話せばいいのか、なにを話さないといけないのか……。
「どうしたんだい、ツーリ?」
「ごめんなさい、えっと、えっと。そうでした。ごろうくんは最近お父さんに乗るん です」
「乗るのかい! ツーリ、それはあまり良いこととは思えないがね。お父さんがかわいそうじゃないか……」
サンタはとても驚き、苦笑いした。
それもそうだ、交渉屋が子どもの悪いところを言うことはめったに無いのだ。
「いや、違うんですサンタさん」
ツーリはあわてて言いなおす。
「乗るっていってもお父さんは大喜びしているんですよ。仕事から帰ってきて疲れている腰を足でマッサージするんです」
「そうか、それはいいことだね。わしはテッキリ乱暴なことをしているのかと思ってしまったよ」
「ごめんなさい。緊張してしまって」
「いいんだよ、落ち着いて話してごらん。ほかにも何かあるかい?」
「えっと、そうですね。ごろうくんは洋服を一人で脱げるようになりました。それに運動会のかけっこで一番になったそうです」
「ほう、ほう」
「あと、お母さんの肩をたたいていました。それに、それに、まだまだあるんですよ。このあいだなんて……」
ツーリは押入れから出されてから、見たもの、聞いたことをサンタに話した。
ひとつひとつ話すうちになんだか嬉しくなってきて、たくさん、たくさん話した。
サンタはヒゲを触ったり、おかしそうに相づちを打ったり、やさしく笑ったりしながらツーリの話を聞いた。
「よくわかったよツーリ。君はごろうくんのことをたくさん知っているんだね」
「はい」
「それでごろうくんの今年のプレゼントなのだか、何がいいと言っていたん だい?」
「『恐竜が飛び出す絵本』です!」
ツーリは押入れで待っている間、ごろうくんの字を読めるように努力した。だが、そんな『サンタに伝える努力』をしていたのはツーリだけではなかった。
今年、ごろうくんが『欲しいものを書いた紙』には、ひらがなだけでなく絵も添えられていた。大好きな恐竜をかいて、クレヨンで茶色くぬって、なんどか書き直したあともあった。ツーリはそれを見てごろうくんが何を欲しがっているのかすぐにわかったのだった。
「ではまたクリスマスイブの夜に会おう」
サンタはツーリにそう告げると、次の交渉屋のところへと急いで行って しまった。
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